「働きながら障害年金をもらえる人」をわかりやすくご説明します

「働いていると障害年金はもらえないのでしょうか」というご質問は、当事務所にも非常に多く寄せられます。

結論からお伝えすると、働きながら障害年金を受給することは可能です。

ただし、就労の有無や形態は審査で確認される要素です。

職場で受けている配慮や、帰宅後・休日の日常生活上の制限が診断書・病歴就労状況等申立書に反映されていないと、実際の障害の状態が審査側に十分に伝わらない可能性があります。

本記事では、働きながら障害年金を受給できる可能性が高い方の特徴、就労形態別の認定傾向、申請時に診断書・申立書で伝えるべきポイントまでを、社会保険労務士の視点で整理してご説明します。

なお、就労状況にかかわらず、障害年金の受給には原則として、初診日要件・障害認定基準該当・保険料納付要件を満たす必要があります。(ただし、20歳前の年金制度未加入期間に初診日がある障害基礎年金では、保険料納付要件は不要です。)

要件の詳細は障害年金の受給要件で解説しています。

働きながらでも障害年金は受給できる可能性があります

働きながらでも障害年金を受給することは制度上認められており、実際に多くの方が就労しながら受給を続けています。

ただし、傷病の種類や就労形態、職場での配慮の有無によって、審査での扱いは異なります。

厚生労働省の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日実施)では、就労していること自体をもって直ちに日常生活能力が向上したとは捉えず、仕事の内容や援助の状況を総合的に判断するとされています。

実際の受給者の就労率について、厚生労働省の社会保障審議会資料から作成した数値は次のとおりです。

・身体障害:就労率 48.0%(約2人に1人)

・知的障害:就労率 58.6%(2人に1人以上)

・精神障害:就労率 34.8%(約3人に1人)

※厚生労働省資料(2019年)20歳~59歳受給者

令和元年(2019年)時点の障害年金受給者の就労率

  身体障害 知的障害 精神障害
障害厚生年金1級 24.7% – –
障害厚生年金2級 50.9% – 28.9%
障害厚生年金3級 73.5% – 4.7%
障害基礎年金1級 39.1% 32.4% 17.2%
障害基礎年金2級 51.4% 75.3% 36.4%
全体 48.0% 58.6% 34.8%

(出典:厚生労働省「第5回社会保障審議会年金部会 資料『障害年金制度』」(令和5年6月26日開催)より作成。データの基準年は2019年(令和元年))

令和元年(2019年)時点の20~59歳の障害年金受給者の就労率は、身体障害48.0%、知的障害58.6%、精神障害34.8%です。

つまり、身体障害の方は約2人に1人、知的障害の方は2人に1人以上、精神障害の方は3人に1人が、働きながら障害年金を受給されているという結果です。

障害の種類別|就労が審査に与える影響度

障害年金の審査において、就労の有無が結果にどの程度影響するかは、傷病の種類によって大きく異なります。

ここでは、外部障害・精神障害・内部障害の3区分で整理してご説明します。

外部障害(眼・聴覚・肢体など)— 就労の影響を受けにくい

眼の障害、聴覚障害、肢体の障害といった外部障害は、視力・聴力・関節可動域などの 客観的な検査数値で障害の程度を判定 します。

そのため、就労していることだけを理由に等級が下がったり不支給になったりすることは、原則としてありません。

また、次のような傷病は、原則として等級の目安が定められています(個別の状態により上位等級となる場合もあります)。

  • 人工透析を受けている方:原則として2級
  • 人工関節・人工骨頭(肢体):原則として3級
  • 人工弁・心臓ペースメーカー・人工肛門:原則として3級
  • 心臓移植・人工心臓:原則として1級

これらの傷病で受給されている方は、就労していても審査への影響は限定的です。

(※上記の3級の目安は、主に障害厚生年金で問題となるものです。障害基礎年金には3級がないため、初診日の加入制度によって受給可否が異なります。人工関節・人工骨頭については、上肢・下肢の主要関節への挿入置換など、認定基準上の要件を確認する必要があります。)

精神障害・内部障害 — 就労状況が審査に影響しやすい

一方、うつ病・双極性障害・統合失調症などの精神疾患、発達障害、知的障害、また内部障害のうち数値化が難しい傷病については、就労状況が審査に影響しやすい傾向があります。

これらの傷病では、日常生活能力や労働への支障が診断書・申立書にどう記載されているかが、審査における重要な判断材料となります。

特に近年、精神疾患では就労の有無を理由に不支給となる事例が以前より増えているとの指摘があり、申請書類の作成には注意が必要です。

働きながら障害年金をもらえる可能性が高い方の特徴

働きながらでも障害年金を受給できる可能性が高い方には、いくつか共通する特徴があります。

ここでは4つのパターンに分けて整理します。

【特徴1】会社から特別な配慮を受けている方

会社の配慮があってようやく就労を継続できている、という方は、働きながら障害年金を受給できる可能性があります。

「特別な配慮」と認められる例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 通常の勤務時間より短い時間しか働けない(時短勤務)
  • 柔軟な勤務形態を認められている(在宅勤務・フレックス等)
  • 本来の業務内容や責任範囲が軽減されている
  • 簡単な業務に配置換えされている
  • 通常より長い休憩時間、または休憩回数の増加が認められている
  • 障害を補うための器具・設備(昇降デスク、音声認識ソフト、拡大読書器等)が会社から提供されている
  • 業務遂行のために介助者が配置されている
  • 休職している、または復職支援プログラムを受けている

これらは「労働能力が十分にある」とは捉えにくい状態のため、就労していても認定の可能性が残ります。

ご自身の状況がこれに該当する場合は、援助の内容を診断書・申立書に詳細に記載いただくことが重要です。

【特徴2】障害者雇用・就労継続支援で働いている方、就労移行支援を利用している方

障害者雇用、就労継続支援A型・B型、就労移行支援といった就労形態は、いずれも一定の援助を前提とした働き方です。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、これらの就労形態については1級または2級の可能性を検討するとされており、認定への配慮が制度上明示されています。

一般企業や自営、家業のもとで就労していても、就労継続支援や障害者雇用と同程度の援助を受けている場合は、2級の可能性を検討するとガイドラインに記載されています。

【特徴3】仕事以外の日常生活に強い制限がある方

職場では何とか働けていても、帰宅後や休日に日常生活に強い制限が出ている場合は、認定の可能性があります。

たとえば次のような状態が考えられます。

  • 帰宅した途端どっと疲れが出て寝込んでしまう
  • 休日は家事も一切できない
  • 家族の援助なしには日常生活が成り立たない

「就労できている」という見え方の裏にある日常生活の困難さを、申請書類に具体的に記載することが大切です。

就労形態別の認定傾向と申請時のアピールポイント

就労形態によって、審査での見られ方やアピールすべきポイントは異なります。

主要な就労形態を一覧で整理しました。

就労形態 認定への影響 アピールすべきポイント
一般就労(フルタイム・配慮なし) 比較的厳しく見られる 日常生活の制限、帰宅後・休日の困難
一般就労(時短・配慮あり) 配慮内容次第で可能性あり 配慮の具体的な内容、就労継続のための援助
障害者雇用 援助前提のため考慮される 業務軽減・配置転換・サポート体制
就労継続支援A型 1〜2級の可能性検討の対象 支援内容、就労時間、作業内容
就労継続支援B型 1〜2級の可能性検討の対象 雇用関係なしでの就労、工賃の状況
就労移行支援 1〜2級の可能性検討の対象 就労準備段階での支援内容
在宅勤務 配慮の一形態として評価 在宅となった経緯、業務制限
休職中 就労していない状態として評価 休職に至った経緯、職場復帰の見通し

(参考:厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)

ご自身の就労形態がどの区分に該当するかを把握したうえで、診断書・申立書でアピールすべきポイントを整理することが大切です。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」での就労状況の見方

精神疾患・発達障害・知的障害で障害年金を申請される方にとって、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の理解は必須です。

このガイドラインは、平成28年9月1日から運用されている、精神障害・知的障害の等級判定の標準的な考え方を示した厚生労働省の文書です。

ガイドラインの「総合評価の際に考慮すべき要素の例」では、就労状況について次のように記載されています。

労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力を判断する。

(出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」平成28年9月1日実施)

つまり、働いているという事実だけで日常生活能力が向上したと判断するのではなく、援助の内容や仕事の状況を総合的に判断する、というのが審査の基本姿勢です。

「相当程度の援助を受けて就労している場合」の解釈

ガイドラインは、就労の援助状況について次の具体例を示しています。

  • 就労継続支援A型・B型、障害者雇用制度による就労 → 1級または2級の可能性を検討
  • 障害者雇用を利用しない一般企業・自営・家業等での就労でも、上記と同程度の援助を受けている場合 → 2級の可能性を検討

ガイドラインでは、一般企業等での就労であっても同程度の援助を受けている場合について、2級の可能性を検討するとされています。

精神の障害のガイドラインの詳しい内容については、精神の障害に係る等級判定ガイドラインの解説もあわせてご参照ください。

働きながら障害年金が「もらえない」と判断される傾向

働きながらの申請でも受給できる方がいる一方、就労が理由で不支給や等級下降の判断を受ける方もいらっしゃいます。

ここでは、認定が厳しくなりやすい傾向を整理します。

フルタイム・一般就労で職場の配慮がない場合

職場の配慮なしにフルタイムで一般就労を継続できている場合、「日常生活や労働に著しい制限がある」とは判断されにくくなります。

特に精神疾患では、近年この傾向が強まっているとの指摘があります。

診断書・申立書で就労状況が正しく伝わっていない場合

実際には配慮を受けていても、診断書の「現症時の就労状況」欄が空欄に近かったり、申立書で配慮の内容が具体的に書かれていなかったりすると、「特に支障なく就労できている」と認定医に判断されてしまう恐れがあります。

書類で見える状況と実態にズレがあると、不支給・等級下降のリスクが高まります。

このような「働きながら障害年金がもらえない」傾向の詳細は、障害年金がもらえない人の特徴で解説しています。

申請時に診断書・申立書で伝えるべきポイント

働きながら障害年金を申請される場合、診断書と病歴・就労状況等申立書は、就労の実態を審査側に伝える中心的な資料となります。

ここでは、書類作成で押さえておきたいポイントを整理します。

診断書(精神の障害用)の「現症時の就労状況」欄

精神の障害用の診断書(様式第120号の4)には、他の様式にはない「現症時の就労状況」という項目があります。

ここには、勤務先・雇用形態・勤続年数・仕事の頻度・給与・仕事の内容・職場での援助の状況・他の従業員との意思疎通の状況などが記載されます。

主治医に診断書を依頼する際は、ご自身の就労状況を具体的に伝え、援助の内容や日常生活への影響を診断書に反映いただくことが重要です。

病歴・就労状況等申立書での書き方

病歴・就労状況等申立書は、診断書を補完する重要書類です。

発症から現在までの病歴とあわせて、就労状況・日常生活状況を時系列で具体的に記載します。

特に、職場で受けている配慮の内容、帰宅後・休日の状況、家族からの援助の有無などは、診断書だけでは伝えきれない情報のため、申立書でしっかり補強する必要があります。

申立書の詳しい書き方については、病歴・就労状況等申立書の書き方もご参照ください。

主治医とのコミュニケーション

診断書は審査における中心的な資料となるため、日頃から主治医に就労状況や日常生活の困難を伝えておくことが大切です。

診察時にうまく話せない場合は、伝えたいことをメモにまとめて主治医に渡す、ご家族に診察に同席いただくなど、工夫を重ねるとよいでしょう。

(医学的判断や治療内容については主治医にご相談ください。本記事は障害年金の認定基準上の取り扱いについて解説したものです)

受給開始後に働き始めた場合の「更新」の注意点

すでに障害年金を受給中の方が、受給開始後に就労を始めた場合、更新時の取り扱いは慎重に検討が必要です。

近年、就労の開始を理由として等級が下がったり、支給停止となるケースが増えているとの相談を多くいただきます。

ただし、就労を始めたからといって必ず等級が下がるわけではありません。

更新時は、原則として障害状態確認届(診断書)の内容が重要です。

必要に応じて、就労状況や配慮内容を説明する補足資料を添付することも考えられます。

働きながら受給できる場合の金額目安(令和8年度・2026年度)

働きながらでも障害年金が認定された場合、受け取れる金額の目安は次のとおりです。

本項は 令和8年度(2026年4月分から) の年金額を記載しています。

障害基礎年金(令和8年度・2026年度)

等級 年額 月額(参考)
1級 1,059,125円 約88,260円
2級 847,300円 約70,608円

(出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」)

子の加算が別途あり、第1子・第2子は1人につき243,800円、第3子以降は1人につき81,300円が加算されます。

なお、昭和31年4月1日以前生まれの方は別額となります。

障害厚生年金(令和8年度・2026年度)

障害厚生年金は 報酬比例の年金額 が基本となるため、過去の標準報酬月額により個人差があります。

  • 1級:報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金額(243,800円)
  • 2級:報酬比例の年金額 + 配偶者加給年金額(243,800円)
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保障額635,500円)

(出典:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」)

障害厚生年金1級・2級に該当する場合は、原則として障害基礎年金1級・2級も併せて受け取ります。

したがって総額は、障害基礎年金額+障害厚生年金の報酬比例部分等で考える必要があります。

配偶者加給年金額は、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合など、所定の条件を満たすときに加算されます。

働きながら障害年金に関するよくあるご質問

働きながらの障害年金申請について、多くいただくご質問にお答えします。

Q1: アルバイトやパートタイムでも申請できますか

アルバイト・パートタイムでの就労でも、障害年金の申請は可能です。

短時間勤務であること自体が、配慮を受けながら就労している状況の表れとなる場合もあります。

Q2: 自営業者は働いていても受給できますか

自営業者の方も、障害の状態が認定基準に該当すれば障害年金を受給できます。

ただし、初診日に国民年金加入者であった場合は障害基礎年金のみが対象となります。

Q3: 受給中に就労を始めても大丈夫ですか

受給中の就労は禁止されていませんが、次回の更新時に就労状況が審査の対象となります。

職場での配慮内容や日常生活への支障は、引き続き診断書・申立書で正確に伝える必要があります。

詳しくは障害年金2級でどれくらい働ける?もご参照ください。

まとめ

本記事の主要ポイントを以下に整理します。

  • 働きながらでも障害年金は受給できる可能性があります(精神障害の方の約3分の1、身体障害の方の約半数が就労しながら受給)
  • 受給の可能性は、傷病の種類・就労形態・職場の配慮の有無により異なります
  • 「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、就労していること自体で日常生活能力が向上したとは捉えない とされており、援助の内容を含めた総合的な判断が原則です
  • 申請時は、診断書の「現症時の就労状況」欄と病歴・就労状況等申立書に、就労の実態が具体的に記載されていることが重要です。
  • すでに受給中の方が就労を始めた場合は、更新時の書類作成にも注意が必要です

働きながらの障害年金申請でお悩みの方は、Yuuki社会保険労務士・FP事務所までお気軽にお問い合わせください。

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